▶落屑緑内障について
2023年05月06日
当院で治療中の緑内障患者様のうち、手術適応のある中等度以上の患者様には、順天堂大学眼科緑内障外来の松田彰助教授との併診をお願いしています。先の日本眼科学会総会で、松田先生が演者として参加されていた「落屑緑内障」に関するシンポジウムを拝聴して来ました。そこで今回は、この落屑緑内障についてお話ししたいと思います。
「落屑」とは聞きなれない言葉ですが、ふけの様な細かい白いゴミが眼内の水晶体や虹彩などに付着した病態を落屑症候群と呼びます。この落屑が隅角部に沈着して、眼内の水が外へ出にくくなり、眼圧が上がると落屑緑内障になります。通常は、片眼に発症しますが、加齢とともに両眼性になることもあります。眼圧の変動が激しく、時には緑内障発作のように40mmHg以上に上がることもあります。また、治療に対して眼圧のコントロールが悪く、進行が速い事も特徴です。治療は、通常の開放隅角緑内障と同様に、種々の点眼薬、レーザー治療さらには観血的手術が行われますが、予後の不良な症例が多いとされています。また、落屑物質は水晶体嚢やチン氏小体、虹彩、角膜内皮にも沈着するため、白内障や水晶体脱臼、散瞳不全、角膜内皮障害などが合併しやすくなります。
今回の学会で松田先生は、手術法に関するお話をされていました。落屑緑内障、特に難治性症例、高齢者症例に対しては、チューブシャント挿入術が良いのではないか、とのお話でした。
落屑緑内障と診断された患者様は、通常の緑内障患者様に比べ、より頻回に緑内障検査を行い、眼圧や視野の状態を十分に把握しておく必要があると思います。